shrinking universe

2017年にBianらが行った研究によれば、幼稚園に通い始めたばかりの5歳の時点で男女に優秀バイアスはほとんど見られず、女児たちは男児と同じように自分のことを「すごく頭がいい」人間になれると思っている確率が高いらしいんですよ。それが6歳になると変化が起こり、女児たちは「女は男より劣っている」と考えるようになりはじめるんですって。知ってました? 興味深いですよね。

わたしは幸い、そうした優秀バイアスを感じないまま生きてきて──なぜかというと、幼稚園でも小学校でも中学受験の塾でもわたしが優秀なのは疑いようのない事実だったし、中学に入ってからは女子校だったので、ジェンダーと優秀さを結び付ける必要がなかったからだと思います。

両親も、自分たちの頃とは違って、わたしたちが成人するときにはきっと実力主義の社会になっているはずだからと、可能性を広げるためにできる限りのことはしようとしてくれていました。

だからわたしがこういったある種の毒に侵されずに、一方では傲慢ともいえるほどの自己肯定感を育ててきたのは、そういった環境で過ごせた幸運と、そうした環境が当たり前であるよう努力してくれた先人、また両親のおかげであるのだと思います。

 

かといって、バイアスがわたしの中に全くないわけではないんですよね。これについては引き続き格闘していきたいと思っているところなんですが、言葉に付随したジェンダーイメージの影響やなんかは受けていると思いますし、中高の頃の自分が憧れてきた対象も割合としては男性に分類されてきた人間が多かったわけで、自分の中の「成功イメージ」が完全にジェンダーフリーかと言われると疑問を呈さざるを得ません。

 

重ねて、冒頭に掲げたようなバイアスが広がるような状況は変えていかなければならない……。

先日のアメリカ大統領就任式典はその第一歩で、映像を見ながら泣きそうになるだけじゃなくて、わたしも頑張らなくちゃなと思いました。

 

キャロライン・クレアド=ペレスの『存在しない女たち:男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く』、

 

 

わたしが研究の道に進んだらここに書いてあることの日本における問題についていくらだって研究するのに……と思いながら読み進めていましたが、研究の道に進まなくても別にいいんですよね。

 

卒業論文を書きながら考えていたのは、わたしはこういう機会を与えられなければこうして論文を書くことはなかっただろうということ、そして大学で学ぶことと言うのは勉強の仕方、科学的な思考の作法、データベースへのアクセスの仕方、論文の書き方、読み方、そしてできればそれを打ち破って新しいものを自分の頭で考える方法だったのだなと思ったし、そういう点ではやはり卒業論文の執筆は大学生活の集大成としては相応しい行動なのだなということでした。あくまでわたしの場合は、という注釈の着く結論ではあると思います、他の人がどんな環境でどんな勉強をしてきたのかをわたしは知りませんから。

わたしは大学卒業後の進路として就職を選ぶことにはなりましたが、勉強は続けようと思いましたし、わたしはわたしの立場でできることを探していきたいなと思います。

 

昨日まで読んでいた『三ギニー』でヴァージニア・ウルフは、アウトサイダーとして、それぞれの立場から戦争や差別等の暴力行為に徹底して反対していくことを提唱していて、わたしは上に書いた決意を新たにすることになりましたし、やはり口ではそういいながらも何もしていなかった自分のことを恥じる羽目になりました。

いまここにおいても、貴兄の手紙に誘われて、小さな事実、取るに足りない些事には耳を塞いでしまいたい、大砲の爆音や蓄音機の喚き声などには耳を貸したくない、むしろ詩人たちがおたがいを呼び交わしつつ、分け隔てなどチョークで書いた線に過ぎないのだから消してしまえばいい、そして一つになればいい、そう請け負う声に耳を傾けていたいという気がしてしまいます━━人間の精神には境界から溢れ出る力がある、そして多様性から一つのものを作り出す力がある、そう貴兄と話していたいと思います。しかしそれは夢見ること━━歴史が始まってこのかた、人間の心につねに去来してきた見果てぬ夢、平和の夢、自由の夢を夢見ることにすぎません。でも貴兄は銃声のこだまを耳にしながら、わたしたちに夢見てくださいと頼んできたのではありません。平和とはなんでしょう? とお尋ねになったのではなく、戦争を阻止するためにはどうしたらいいでしょうか? と尋ねていらしたのです。ですから夢の何たるかは詩人に任せて、わたしたちは写真に、事実に、いま一度目を据えましょう。

ウルフの文章は流れるようで、畳みかけるような言い回しが本当に上手い。わたしもこういう文章が書けるようになりたいものですが、このエントリを読む限りでは途方もない時間が必要になる目標ですね。

 

三ギニー (平凡社ライブラリー)

三ギニー (平凡社ライブラリー)