勘ぐれい
「人のことを愛するようにキャラクターを愛しているよね」と言われたことがある。
「人のことを愛するようにキャラクターを愛して」いるかはともかく、キャラクターのことを考えるときに、その人の発言の余白だとか、背景だとか、そういうものを取りこぼさないようにしていたいなとは思っている。それがたとえ、独り相撲にすぎないとしても。
キャラクターに限らず、遠いところにいる人間に対して──つまり、直接コミュニケーションを取ることが難しい相手に対して、その人の尊厳や、その人の望む幸福を推しはかることは困難で、おそらくは不可能なのだと思う。
それでも、わからないから無視していいわけではない、と思う。大切にしたいから、愛しているから、わたしの愛(暴力)でその人のことを損ないたくないから。
そう思うと、キャラクターを相手取った独り相撲というのは大変に心地がいいことで、なぜならキャラクターには「正解」がないわけだから、わたしの解釈がその人のことを本当の意味で損なう事はないのである。人間は違う。人間は生きていて、存在していて、意識的にも無意識的にも行動をするものだから、損なわないということが本当に難しい。
そう思って、わたしは俳優を追いかけるのを辞めてしまった。何も知らない相手を愛することは、難しかったから。少なくともわたしには。
全部選んでほしかった。その人の意思が知りたかった。わたしに推しはかることも、確かめることも、すり合わせることもできないその人の意思だけが、わたしにとっては重要だった。
「人のことを愛するようにキャラクターを愛して」いるかはともかく、直接コミュニケーションを取ることが難しい相手に対してのわたしの愛、あるいはわたしの要求には、明確に形というか、テーマみたいなものがある。世界で一番好きなその俳優に対しては、「全部選んでほしい」がそれ。
鬼滅の刃にハマってた時は「同じ地獄を腹に飼いたい」って言ってたし(その後、作中でその男が母親に対して「お袋を背負って地獄を歩くよ」って言い始めた時は狂うかと思った)、今ハマっているあんさんぶるスターズ!!の大馬鹿アイドルに対しては「意図しない形で他人を傷つけてほしくない」って言ってる。オタクきしょすぎる……死のうかな……独り相撲は楽だしたのしいけれど、完全に気色の悪い行いなんだよな……。
でも仕方ない。こうしないと愛せないから。なんの話?